「古刀」「新刀」と書かれていても、何が違うのか分からない方へ
刀剣店の商品説明や鑑定書を見ると、「古刀」「新刀」「新々刀(しんしんとう)」「現代刀」といった言葉がよく出てきます。刀を初めて手にした方にとっては、「古い刀が古刀なのは分かるけれど、新刀は新しく作った刀のこと?」「現代刀は価値が低いの?」と疑問に思うことも多いはずです。
この記事では、日本刀の時代区分の考え方と、それぞれの時代の刀の特徴、区分を知るうえでの注意点を初心者向けにやさしく解説します。
古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いは「作られた時代」です
古刀・新刀・新々刀・現代刀とは、日本刀が作られた時代による区分です。一般に、慶長(けいちょう)年間(1596年〜)より前が古刀、慶長から江戸時代中期までが新刀、江戸時代後期から明治9年(1876年)の廃刀令までが新々刀、それ以降が現代刀とされます(境目の年には諸説あります)。
なお「新刀」は「新しく作った刀」という意味ではなく、江戸時代の刀を指す専門用語です。まずはこの点を押さえておきましょう。
| 区分 | おおよその時代 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 古刀(ことう) | 平安時代中期頃〜慶長年間(1596年〜)より前 | 各地の流派が独自の作風を持つ。反りの深い太刀から打刀へ移り変わる |
| 新刀(しんとう) | 慶長年間〜江戸時代中期(明和年間頃まで) | 城下町で作刀が盛んに。地鉄が均質になり、華やかな刃文も流行 |
| 新々刀(しんしんとう) | 江戸時代後期(明和末〜安永頃、1770年代以降)〜明治9年の廃刀令 | 古刀の作風を再現しようとする復古の動き |
| 現代刀(げんだいとう) | 廃刀令以降〜現在 | 美術品として作られる。現在は文化庁長官の作刀承認を受けた刀匠が制作 |
区分の境目となる年代は、資料によって少しずつ異なります。とくに新刀と新々刀の境目は、明和(めいわ)年間の終わり(1772年頃)とするもの、安永(あんえい)年間(1772〜1781年)とするもの、天明(てんめい)頃とするものなど諸説あります。古刀と新刀の境目も、慶長元年(1596年)とするのが一般的ですが、文禄(ぶんろく)年間とする見方もあり、厳密に一つの年で区切れるものではありません。あくまで「目安」として理解しておくのがよいでしょう。
古刀:各地の流派が花開いた時代
古刀は、反りのある日本刀の姿が成立したとされる平安時代中期頃から、安土桃山時代までに作られた刀です。この時代は、大和(やまと)・山城(やましろ)・備前(びぜん)・相模(さがみ)・美濃(みの)といった地域ごとに刀工の流派が栄え、のちに「五箇伝(ごかでん)」と呼ばれる作風の系統が生まれました。
国宝や重要文化財に指定されている刀の多くは古刀です。一方で、長い年月の中で研ぎ減りしていたり、磨上げ(すりあげ)によって短く仕立て直されていたりするものも多く見られます。
新刀:江戸時代の城下町で作られた刀
慶長年間を境に、刀の作り方や流通の仕組みが大きく変わったとされます。戦国時代が終わり、刀工は各地の城下町、とくに江戸・大坂・京などに集まって作刀するようになりました。鉄の流通が広がったことで、古刀に比べて地鉄(じがね)が均質で、きめの細かいものが多いのが特徴といわれます。
また、大坂を中心に、濤瀾刃(とうらんば)のような華やかな刃文も生まれました。新刀の刀工は、茎(なかご)に年紀や住所を刻むことも多く、作られた時期を知る手がかりになります。
新々刀:古刀への回帰を目指した時代
江戸時代後期になると、「古刀の優れた作風を取り戻そう」という復古の考え方が広まりました。その中心人物の一人とされるのが、刀工の水心子正秀(すいしんしまさひで)です。この動きの中で作られた刀が新々刀と呼ばれます。
幕末には社会情勢の変化から刀の需要が高まり、実用を意識した身幅の広い、力強い姿の刀も多く作られました。
現代刀:美術品として受け継がれる刀
明治9年の廃刀令(はいとうれい)によって帯刀が禁止されると、刀の需要は大きく減りました。それ以降に作られた刀が現代刀です。現在、日本刀(美術刀剣)を作るには、承認を受けた刀匠のもとで5年以上修業し、文化庁の研修(美術刀剣刀匠技術保存研修会)を修了したうえで、文化庁長官の作刀承認を受ける必要があります。制作される刀は美術品として扱われます。なお、刀匠の作刀数には「月2振(年24振)まで」という目安が知られていますが、これは法律の条文で定められた上限ではなく、行政上の指導・運用によるものと説明されることが多く、その扱いについては見解が分かれています。現代刀にも高い技術を持つ刀匠の作品が多くあり、「新しいから価値がない」ということは決してありません。
なお、昭和の戦時中に作られた刀の中には、伝統的な製法によらないものもあり、そうした刀は美術品として登録されない場合があります。個別の刀については専門家に確認しましょう。
時代区分を知るうえでの注意点・失敗例
「古い=価値が高い」とは限らない
初心者がよく誤解するのが、「古刀なら新刀より必ず価値が高い」という考え方です。実際の評価は、刀工、出来栄え、保存状態、鑑定の有無などで大きく変わります。状態の悪い古刀より、出来の良い新刀や現代刀のほうが高く評価されることも珍しくありません。値段の考え方は日本刀の値段の決まり方も参考にしてください。
銘の年紀だけで判断しない
茎に刻まれた銘(めい)や年紀は重要な手がかりですが、中には後の時代に入れられた偽銘(ぎめい)もあります。無銘の刀の場合は、姿・地鉄・刃文などから時代や流派が推定されますが、これには専門的な知識が必要です。時代の判断に迷ったら、日本美術刀剣保存協会などの鑑定書が付いているか確認するのが確実です。詳しくは日本刀の鑑定書とはをご覧ください。
境目の年代を厳密に覚えすぎない
時代区分は後世の研究者や愛好家が整理したもので、境目の刀工が「古刀と新刀のどちらに入るか」は議論になることもあります。まずは大まかな流れをつかむことを優先しましょう。
登録証の記載から時代は分からない
銃砲刀剣類登録証には、刀の種類・長さ・反り・目釘穴の数・銘文などが記載されますが、「古刀」「新刀」といった時代区分は書かれていません。登録証はあくまで所持のための書類であり、刀の時代や真贋を保証するものではない点に注意しましょう。登録証については銃砲刀剣類登録証とはで詳しく解説しています。
まとめ
- 古刀・新刀・新々刀・現代刀は、刀が作られた時代による区分です
- 慶長年間が古刀と新刀の境目、明治9年の廃刀令が新々刀と現代刀の境目とされます
- 新刀と新々刀の境目は諸説あり、年代は目安として考えるのが安心です
- 時代だけで刀の価値が決まるわけではありません
時代区分を知ると、刀剣店の説明や博物館の展示がぐっと理解しやすくなります。お手元の刀がどの時代のものか、ぜひ登録証や鑑定書と照らし合わせて調べてみてください。刀の背景にある歴史が見えてくると、鑑賞の楽しみがさらに深まります。

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