行平(ゆきひら)は、刀剣要覧の位列で「古刀・極上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」に位置づけられている刀工です。
行平とは
行平(ゆきひら)は、平安時代末期から鎌倉時代前期にかけて豊後国(現在の大分県)で活躍した刀工で、「豊後行平」とも呼ばれます。元久2年(1205)の年紀をもつ作が現存しており、後鳥羽上皇のもとで月番で刀を鍛えた「御番鍛冶」の一人に数えられています。九州の古刀を代表する名工です。
系譜と経歴
行平は、僧・定秀の子、あるいは門人とされます。跡を継いだ安則については、行平の子、次男、弟子など諸説があります。
経歴には波乱に富んだ伝承があり、罪を犯して元暦年間に上野国(現在の群馬県)へ流され、正治元年(1199)まで16年間を配所で過ごしたとされます(相模の由比ヶ浜に流されたとする説もあります)。また「鬼神大夫」という異名は、鬼神が現れて行平とともに刀を鍛えたという伝説に由来するといわれます。
作風の特徴
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 彫物 | 倶利伽羅竜の透かし彫り、棒樋、梵字などの彫物を施した作が見られる |
| 銘 | 「行平」のほか、「方士」「宗安」「宗秀」「品」など別の銘(隠し銘)を用いたとされる |
刀身に宗教的な意味をもつ彫物を施すことは、行平の大きな特色として知られています。姿・地鉄・刃文の細かな特徴については、実物や専門書での確認をおすすめします。
代表作
- 国宝 太刀(名物 古今伝授の太刀)…戦国武将・細川幽斎(藤孝)ゆかりの名刀で、永青文庫が所蔵しています。
- 重要文化財も多く、名古屋市博物館、東京国立博物館、京都国立博物館、佐野美術館、日光二荒山神社、日枝神社、八坂神社、輪王寺などに所蔵されています。
鑑賞・購入のポイント
- 古い時代の名工で在銘作は限られるため、「行平」銘の刀が市場に出た場合は偽銘の可能性を慎重に考えましょう。
- 彫物の有無や題材は、行平の作を鑑賞するうえでの見どころの一つです。
- 九州の刀工の系譜は、平安末期の姿の特徴とあわせて時代区分の解説で整理すると理解しやすくなります。
基本情報
| 刀工名 | 行平 |
|---|---|
| 読み | ゆきひら |
| 時代 | 古刀 |
| 国 | 豊後 |
| 代 | — |
位列
| 位列 | 位 | 備考 |
|---|---|---|
| 刀剣要覧の位列 | 古刀・極上作 | 第22版(古刀の部・一位) |
| 刀工辞典の位列 | 古刀・最上作 | — |
位列から見る刀剣界での立ち位置
- 刀剣要覧の位列:「古刀・極上作」——古刀の部に掲載された181工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです。古刀・新刀・新々刀ごとに段階が分かれています。(一覧を見る)
- 刀工辞典の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された615工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです(最上作〜中作の5段階)。(一覧を見る)
位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。
生きた時代と歴史的背景
古刀(〜慶長年間)
古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。
関連する刀工・ページ
同じ時代・同じ国(古刀・豊後)の刀工
豊後国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。
まとめ
行平は、刀剣要覧の位列で「古刀・極上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」と位置づけられている古刀の刀工です。豊後国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。