大和五派とは?千手院・当麻・尻懸・手掻・保昌の違いを解説

大和五派とは?

大和五派は、五箇伝(ごかでん)の一つ「大和伝(やまとでん)」を代表する5つの流派の総称です。五箇伝全体については五箇伝とはをご覧ください。

目次

「伝当麻」「伝手掻」…大和の流派名が覚えられない方へ

刀剣店の商品説明や博物館の解説で、「伝当麻(でんたいま)」「手掻包永(てがいかねなが)」「保昌(ほうしょう)」といった名前を見かけることがあります。どれも大和国の刀工集団の名前ですが、5つもあるうえに読み方も難しく、初心者には混乱しやすいところです。

この記事では、大和五派それぞれの成り立ち、系譜、作風の違い、代表的な名刀、見分け方のポイントを初心者向けに整理します。

大和五派とは、千手院・当麻・尻懸・手掻・保昌の5つの流派をまとめた呼び名です

大和五派(やまとごは)とは、大和国(やまとのくに。現在の奈良県)で活動した刀工集団のうち、とくに有名な千手院派・当麻派・尻懸派・手掻派・保昌派の5つを指す呼び名です。多くが東大寺などの有力寺院と結びついて活動し、高い鎬(しのぎ)と柾目(まさめ)を交える地鉄、直刃を基調とした刃文という大和伝の特徴を共有しています。

成立地と時代:寺院とともに歩んだ刀工たち

大和五派は、平安時代末期から室町時代にかけて、奈良の寺院周辺で活動しました。当時の大寺院は僧兵(そうへい)を抱える大きな勢力で、刀工たちはその需要に応える形で寺院のお抱えになったとされます。そのため流派名にも、寺院の名前や寺院周辺の地名に由来するものが多く見られます。

5つの流派の系譜と特色

刀剣ワールドの解説をもとに、5つの流派を活動時期の古い順に整理します。祖とされる刀工や活動時期には諸説があり、目安として見てください。

流派 祖・主要刀工 活動時期(目安) 拠点・由来
千手院派(せんじゅいんは) 行信(ゆきのぶ)が祖とされる 平安時代末期〜南北朝時代 東大寺の千手院に属したとされる
当麻派(たいまは) 国行(くにゆき)が祖とされる 鎌倉時代後期〜南北朝時代 当麻寺(たいまでら)と関係があったとされる
尻懸派(しっかけは) 則長(のりなが) 鎌倉時代後期〜南北朝時代初期 東大寺の近くの「尻懸」の地
手掻派(てがいは) 包永(かねなが)が祖とされる 鎌倉時代末期〜室町時代 東大寺の転害門(てがいもん)の前
保昌派(ほうしょうは) 国光(くにみつ)が祖とされる。貞宗(さだむね)・貞吉(さだよし)ら 鎌倉時代後期〜室町時代 大和国高市郡(たけちぐん)

千手院派は大和五派の中で最も古いとされ、古い時期の刀工は「古千手院(こせんじゅいん)」と呼ばれます。手掻派は、代々の刀工が「包」の字を銘に用いたことが知られ、「転害派」と書かれることもあります。保昌派の貞宗・貞吉は、相州の貞宗とは別の刀工です。

作風の特徴:共通点と各派の個性

大和五派に共通する傾向と、各派の個性を表にまとめます。

見どころ 大和五派の傾向
姿(すがた) 鎬筋が高く、鎬幅が広い。当麻派には、切先が詰まった猪首切先(いくびきっさき)の姿が見られるとされる
地鉄(じがね) 板目肌に柾目肌が交じる。保昌派は全体が柾目肌になる「柾目鍛え」で名高く、尻懸派には「尻懸肌」と呼ばれる独特の肌合いがあるとされる
刃文(はもん) 中程度の沸(にえ)による直刃が基調。ほつれや二重刃など、刃縁に縦方向の変化が出やすい
帽子(ぼうし) 焼詰(やきづめ)や掃掛け(はきかけ)など、大和伝らしい帽子が見られる
茎・銘(なかご・めい) 無銘の作が多く、当麻派はとくに在銘作が少ないとされる。手掻派は「包」の字の銘で知られる

代表的な名刀

当麻派の祖とされる国行の作では、「太刀〈銘国行〉」が国宝に指定され、刀剣博物館(東京都墨田区)に所蔵されています(文化遺産オンラインで確認)。解説では、当麻派の祖・国行の数少ない在銘作とされています。なお、同じ「国行」の銘でも、山城国の来国行とは別の刀工です。

手掻派では、祖とされる包永の作「太刀〈銘包永〉」が重要文化財に指定され、東京国立博物館に所蔵されています(文化遺産オンラインで確認)。展示の有無は時期によって異なるため、見学前に公式サイトで確認しましょう。

見分け方・鑑賞のポイント

大和五派の刀を見るときは、まず横から姿を見て鎬筋の高さを確かめ、次に光にかざして地鉄に縦に流れる柾目がどれほど交じるかを観察しましょう。刀身全体に整然と柾目が流れていれば保昌派らしさ、板目の中に柾目が交じる程度であれば他の派の可能性を考える、というのが入り口になります。

そのうえで、直刃の刃縁に沿って現れるほつれや二重刃、帽子の焼詰や掃掛けを探してみてください。大和物の直刃は、細部の働きを見つけるほど味わいが深まります。あわせて地鉄・地肌とはや帽子とはも参考にしてください。

大和五派を見るときの注意点・失敗例

「伝〇〇」の鑑定は推定であることを理解する

大和五派の刀は無銘のものが多く、「伝当麻」「伝千手院」のように作風から流派が推定されています。これは鑑定者の判断であり、確定した事実ではありません。購入時には日本刀の鑑定書の内容を確認し、分からない点は刀剣店に質問しましょう。

同じ名前の別人に注意

当麻派の国行と来派の国行、保昌派の貞宗と相州の貞宗のように、大和五派には他の地域の名工と同じ名前の刀工がいます。名前だけで判断せず、流派名とセットで覚えましょう。

柾目だけで流派を決めつけない

柾目肌は大和伝の大きな手がかりですが、他の地域の刀にも見られます。姿、刃文、帽子など複数の特徴を組み合わせて見ることが大切です。

まとめ

  • 大和五派は、千手院・当麻・尻懸・手掻・保昌の5つの流派の総称です
  • 多くが奈良の寺院と結びつき、平安時代末期から室町時代にかけて活動しました
  • 高い鎬、柾目の交じる地鉄、働きの豊かな直刃が共通の見どころです
  • 保昌派の柾目肌、手掻派の「包」の銘など、各派の個性にも注目しましょう

5つの名前は最初は難しく感じますが、寺院や地名と結びつけると覚えやすくなります。博物館で大和物に出会ったら、ぜひ柾目の流れと直刃の細かな働きをじっくり探してみてください。

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