次郎左衛門勝光(じろうざえもんかつみつ)は、業物位列で「良業物」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」に位置づけられている刀工です。
次郎左衛門尉勝光とは
次郎左衛門尉勝光(じろうざえもんのじょうかつみつ)は、室町時代後期に備前国長船(現在の岡山県瀬戸内市)で活躍した長船派の刀工です。室町後期の備前刀、いわゆる「末備前(すえびぜん)」を代表する名工の一人で、永正年間(1504〜1521年)ごろの年紀のある作が知られています。
系譜と経歴
次郎左衛門尉勝光は、右京亮勝光の子です。父の没後には、叔父にあたる左京進宗光との合作も残しています。
勝光の名は長船で何代にもわたって用いられ、代の数え方は資料によって異なります。右京亮を初代・次郎左衛門尉を二代とする説明がある一方、長船の勝光を五代まで数えて、右京亮を四代・次郎左衛門尉を五代とする説明もあります。代数よりも、「右京亮」「次郎左衛門尉」といった俗名で区別するとわかりやすいでしょう。長船には同じ勝光を名乗る修理亮勝光もいます。
作風の特徴
父の右京亮と同じく、末備前らしい実用的で華やかな作風です。特に彫物のある作が多いことが特徴として挙げられます。
| 見どころ | 特徴 |
|---|---|
| 彫物 | 彫物のある作が多い。棒樋に添樋、「天照皇太神」「八幡大菩薩」などの文字彫りを施した例がある |
| 銘 | 「備前国住長船勝光作」「備前国住長船次郎左衛門尉勝光」「備前国住長船二郎左衛門尉勝光」などと切る |
末備前の刃文は互の目丁子などが中心です。刃文の見方は刃文の種類、備前刀の全体像は備前伝で紹介しています。
鑑賞・購入のポイント
「勝光」銘の刀は複数の刀工によるものがあり、俗名のない「長船勝光作」銘の場合は、どの勝光の作かを判断するのに専門的な知識が必要です。年紀や銘の書体、彫物の有無などが手がかりになりますが、最終的には日本美術刀剣保存協会の鑑定書で極めを確認するのが確実です。人気の高い末備前の名工なので、偽銘にも注意しましょう。
基本情報
| 刀工名 | 次郎左衛門勝光 |
|---|---|
| 読み | じろうざえもんかつみつ |
| 時代 | 古刀 |
| 国 | 備前 |
| 代 | — |
| 流派 | 長船派 |
位列
| 位列 | 位 | 備考 |
|---|---|---|
| 業物位列 | 良業物 | — |
| 刀工辞典の位列 | 古刀・最上作 | 刀工辞典の時代区分:末古刀(寛正-文禄) |
位列から見る刀剣界での立ち位置
- 業物位列:「良業物」——この位列に掲載された172工のうちの一人で、4段階中、上から3番目の位です。江戸時代の試し斬りの結果をもとにした、切れ味の格付けです。刀の美しさや出来を評価したものではありません。(一覧を見る)
- 刀工辞典の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された615工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです(最上作〜中作の5段階)。(一覧を見る)
位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。
生きた時代と歴史的背景
古刀(〜慶長年間)
古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。
長船派の作風と鑑定のポイント
以下は長船派全体の一般的な傾向です。個々の刀工・代によって異なり、例外も多くあります。流派の詳しい解説は長船派とはをご覧ください。
| 見どころ | 傾向 |
|---|---|
| 姿(すがた) | 鎌倉期は腰反りの太刀姿。南北朝期は身幅広く大切先の豪壮な姿も。末備前は反りのやや浅い打刀が多い |
| 地鉄(じがね) | 小板目や板目に杢目交じり。映りが立つものが多い |
| 刃文(はもん) | 匂出来の丁子乱れが基本。光忠・長光は華やかな丁子、景光は片落ち互の目、兼光は沸の強い作風、末備前は互の目乱れなど |
| 帽子(ぼうし) | 長光・真長・景光には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子」が見られるとされる |
| 茎・銘(なかご・めい) | 「備前国長船住◯◯」「備州長船◯◯」など、国名・地名入りの長銘や年紀入りの作が多い |
備前伝(五箇伝)の傾向
備前伝は五箇伝の一つです。傾向の詳細は備前伝とはで解説しています。
| 見どころ | 傾向 |
|---|---|
| 姿(すがた) | 区(まち)の近く、刀身の手元寄りから反る「腰反り(こしぞり)」が多い |
| 地鉄(じがね) | 板目肌に杢目(もくめ)が交じる。地に白い影のような「映り」、とくに「乱れ映り」が立つものが多い |
| 刃文(はもん) | 丁子の実を並べたような華やかな丁子乱れが代表的。匂(におい)を主体とした刃文が多い |
| 帽子(ぼうし) | 長船派の長光・景光・真長には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子(さんさくぼうし)」が見られるとされる |
関連する刀工・ページ
同じ流派の刀工
同じ時代・同じ国(古刀・備前)の刀工
備前国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。
まとめ
次郎左衛門勝光は、業物位列で「良業物」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」と位置づけられている古刀の刀工です。備前国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。
出典
- https://ja.wikipedia.org/wiki/刀剣の業物一覧
- http://www.tsuruginoya.com/mn1_6/mn6_5_4.html
- https://www.meihaku.jp/sword-basic/yokiwazamono-58/
- https://www.tsuruginoya.com/infomation/data/iretsu-koto
- https://k.n-owner.jp/刀を知る/new刀を知る 古刀列位/
- https://www.e-sword.jp/katana/2110-1003.htm
- https://www.tsuruginoya.com/mn1_3/f00117.html