藤四郎祐定(とうしろうすけさだ)は、業物位列で「大業物」に位置づけられている刀工です。
藤四郎祐定とは
藤四郎祐定(とうしろうすけさだ)は、安土桃山時代の天正(1573〜1592年)ごろに備前国長船(現在の岡山県瀬戸内市)で作刀した長船派の刀工です。室町時代後期の長船では、一門の多くの刀工が同じ「祐定」の名を名乗っており、藤四郎はそのうち天正ごろの祐定の一人です。長船が大災害に見舞われた時代を生き延び、次の世代へ刀づくりをつないだ人物として伝えられています。
系譜と経歴
祐定の名は一種のブランドのように使われ、同名の刀工は一説に60人を超えるといわれます。天正ごろには、藤四郎のほか新十郎などの祐定がいたとされます。
藤四郎の名を今に伝えるのは、天正18年(1590年)8月15日の大洪水の逸話です。吉井川の増水と山崩れで堤が切れ、長船や隣の畠田は濁流に呑まれて、長く続いた備前刀の産地は一夜にして壊滅的な打撃を受けました。伝承では、藤四郎祐定の一家は流される屋根に取りついて約4キロ下流の蠣山(かきやま)に流れ着き、奇跡的に助かったといいます。
一族の多くを失いながらも、藤四郎は長船の刀づくりを自分の家で立て直そうとしました。当時、長男の七兵衛はまだ15歳、三男の源左衛門や四男の惣左衛門は幼く、次男の五郎は洪水で行方不明になっていたと伝わります。のちに子どもたちが父の志を継ぎ、江戸時代の「新刀」期の長船を担う刀工になりました(七兵衛祐定、源左衛門尉祐定など)。
作風の特徴
藤四郎個人の作風を詳しく記した資料は確認できませんでした。参考までに、祐定の名で最も評価の高い与三左衛門尉祐定は、互の目乱れの焼頭が二つに割れる「蟹の爪」と俗称される刃文で知られます。
鑑賞・購入のポイント
祐定の作は、「与三左衛門尉」のように俗名(通称)を銘に入れたものが高く評価され、俗名のない作は戦国時代の大量の需要に応えた「数打ち」とされることが多いです。藤四郎祐定の作かどうかも、銘に「藤四郎」の俗名が入るかどうかが大きな手がかりになります。
基本情報
| 刀工名 | 藤四郎祐定 |
|---|---|
| 読み | とうしろうすけさだ |
| 時代 | 古刀 |
| 国 | 備前 |
| 代 | — |
| 流派 | 長船派 |
位列
| 位列 | 位 | 備考 |
|---|---|---|
| 業物位列 | 大業物 | つるぎの屋は「長船祐定(藤四郎・天正)」。 |
位列から見る刀剣界での立ち位置
- 業物位列:「大業物」——この位列に掲載された172工のうちの一人で、4段階中、上から2番目の位です。江戸時代の試し斬りの結果をもとにした、切れ味の格付けです。刀の美しさや出来を評価したものではありません。(一覧を見る)
位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。
生きた時代と歴史的背景
古刀(〜慶長年間)
古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。
長船派の作風と鑑定のポイント
以下は長船派全体の一般的な傾向です。個々の刀工・代によって異なり、例外も多くあります。流派の詳しい解説は長船派とはをご覧ください。
| 見どころ | 傾向 |
|---|---|
| 姿(すがた) | 鎌倉期は腰反りの太刀姿。南北朝期は身幅広く大切先の豪壮な姿も。末備前は反りのやや浅い打刀が多い |
| 地鉄(じがね) | 小板目や板目に杢目交じり。映りが立つものが多い |
| 刃文(はもん) | 匂出来の丁子乱れが基本。光忠・長光は華やかな丁子、景光は片落ち互の目、兼光は沸の強い作風、末備前は互の目乱れなど |
| 帽子(ぼうし) | 長光・真長・景光には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子」が見られるとされる |
| 茎・銘(なかご・めい) | 「備前国長船住◯◯」「備州長船◯◯」など、国名・地名入りの長銘や年紀入りの作が多い |
備前伝(五箇伝)の傾向
備前伝は五箇伝の一つです。傾向の詳細は備前伝とはで解説しています。
| 見どころ | 傾向 |
|---|---|
| 姿(すがた) | 区(まち)の近く、刀身の手元寄りから反る「腰反り(こしぞり)」が多い |
| 地鉄(じがね) | 板目肌に杢目(もくめ)が交じる。地に白い影のような「映り」、とくに「乱れ映り」が立つものが多い |
| 刃文(はもん) | 丁子の実を並べたような華やかな丁子乱れが代表的。匂(におい)を主体とした刃文が多い |
| 帽子(ぼうし) | 長船派の長光・景光・真長には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子(さんさくぼうし)」が見られるとされる |
関連する刀工・ページ
同じ流派の刀工
同じ時代・同じ国(古刀・備前)の刀工
備前国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。
まとめ
藤四郎祐定は、業物位列で「大業物」と位置づけられている古刀の刀工です。備前国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。