彦兵衛尉祐定(ひこべえのじょうすけさだ)の位列と基本情報|刀工データベース

彦兵衛尉祐定(ひこべえのじょうすけさだ)は、業物位列で「大業物」、刀剣要覧の位列で「古刀・中上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」に位置づけられている刀工です。

彦兵衛尉祐定とは

彦兵衛尉祐定(ひこべえのじょうすけさだ)は、室町時代後期に備前国長船(現在の岡山県瀬戸内市)で活躍した長船派の刀工です。明応(1492〜1501年)から永正ごろにかけての作が残り、室町後期の備前刀「末備前(すえびぜん)」の中でも、与三左衛門尉祐定に次ぐ高い評価を受けている祐定です。

系譜と経歴

「祐定」は、室町時代から江戸時代にかけて数多くの刀工が名乗った名前です。その中で、俗名の「彦兵衛尉」を名乗った祐定は、末備前で最も栄えた祐定一族の初代にあたる刀工と説明されます。また、末備前随一の名工とされる与三左衛門尉祐定の父であるとされています。

永正ごろの長船には、彦兵衛尉・与三左衛門尉・源兵衛尉など、俗名を名乗る祐定の名工が並び立っていました。

作風の特徴

明応8年(1499年)の年紀を持つ短刀の例では、次のような特徴が見られます。

見どころ 特徴
地鉄 板目肌がやや流れごころとなり、地沸がよくつき、細かな地景が入る
刃文 直刃を基調に、小乱れや小湾れごころが交じる。小足が入り、小沸がよくつき、砂流しがかかる
銘 俗名を入れない「備州長船祐定作」の銘でも、書体や年紀から彦兵衛尉の作と鑑定される例がある

祐定一門の上手には、互の目の頭が二つに割れる「蟹の爪」と呼ばれる刃文も知られます。刃文の用語は刃文の種類、備前刀の基本は備前伝をご覧ください。

鑑賞・購入のポイント

彦兵衛尉祐定の作には、俗名を入れない銘のものもあり、その場合は銘の書体や年紀が見分けの手がかりになります。ただし「祐定」銘の刀は戦国時代に大量に作られたため、同名の別人の作と区別するのは簡単ではありません。「彦兵衛尉」と極められているかどうかは、日本美術刀剣保存協会の鑑定書で確認するのが確実です。

基本情報

刀工名 彦兵衛尉祐定
読み ひこべえのじょうすけさだ
時代 古刀
国 備前
代 —
流派 長船派

位列

位列 位 備考
業物位列 大業物 つるぎの屋は「長船祐定(彦兵衛・永正)」。
刀剣要覧の位列 古刀・中上作 第22版(古刀の部・五位)
刀工辞典の位列 古刀・最上作 刀工辞典の時代区分:末古刀(寛正-文禄)/n-owner.jp は「彦兵衛尉祐定」と表記。

位列から見る刀剣界での立ち位置

  • 業物位列:「大業物」——この位列に掲載された172工のうちの一人で、4段階中、上から2番目の位です。江戸時代の試し斬りの結果をもとにした、切れ味の格付けです。刀の美しさや出来を評価したものではありません。(一覧を見る)
  • 刀剣要覧の位列:「古刀・中上作」——古刀の部に掲載された181工のうちの一人で、5段階中、上から5番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです。古刀・新刀・新々刀ごとに段階が分かれています。(一覧を見る)
  • 刀工辞典の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された615工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです(最上作〜中作の5段階)。(一覧を見る)

位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。

生きた時代と歴史的背景

古刀(〜慶長年間)

古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。

長船派の作風と鑑定のポイント

以下は長船派全体の一般的な傾向です。個々の刀工・代によって異なり、例外も多くあります。流派の詳しい解説は長船派とはをご覧ください。

見どころ 傾向
姿(すがた) 鎌倉期は腰反りの太刀姿。南北朝期は身幅広く大切先の豪壮な姿も。末備前は反りのやや浅い打刀が多い
地鉄(じがね) 小板目や板目に杢目交じり。映りが立つものが多い
刃文(はもん) 匂出来の丁子乱れが基本。光忠・長光は華やかな丁子、景光は片落ち互の目、兼光は沸の強い作風、末備前は互の目乱れなど
帽子(ぼうし) 長光・真長・景光には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子」が見られるとされる
茎・銘(なかご・めい) 「備前国長船住◯◯」「備州長船◯◯」など、国名・地名入りの長銘や年紀入りの作が多い

備前伝(五箇伝)の傾向

備前伝は五箇伝の一つです。傾向の詳細は備前伝とはで解説しています。

見どころ 傾向
姿(すがた) 区(まち)の近く、刀身の手元寄りから反る「腰反り(こしぞり)」が多い
地鉄(じがね) 板目肌に杢目(もくめ)が交じる。地に白い影のような「映り」、とくに「乱れ映り」が立つものが多い
刃文(はもん) 丁子の実を並べたような華やかな丁子乱れが代表的。匂(におい)を主体とした刃文が多い
帽子(ぼうし) 長船派の長光・景光・真長には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子(さんさくぼうし)」が見られるとされる

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備前国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。

まとめ

彦兵衛尉祐定は、業物位列で「大業物」、刀剣要覧の位列で「古刀・中上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」と位置づけられている古刀の刀工です。備前国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。

出典

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