行光(ゆきみつ)は、刀剣要覧の位列で「古刀・最上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」に位置づけられている刀工です。
行光とは
行光(ゆきみつ)は、鎌倉時代の末期に相模国(現在の神奈川県)の鎌倉で刀を作った刀工です。相州伝の創始者とされる新藤五国光の流れをくみ、あの正宗の父、あるいは兄弟子と伝えられる名工です。通称を「藤三郎行光」といい、「相州行光」とも呼ばれます。在銘作の年紀は嘉元(1303年〜)から建武(1334年〜)ごろまでとされ、まさに相州伝が形づくられていく時期に活躍しました。
系譜と経歴
行光の出自や師弟関係には諸説があります。名古屋刀剣博物館の解説では、豊後国の刀工・行平の流れを引き、鎌倉に出て新藤五国光に師事したと紹介されています。一方で、国光の実子とする説もあり、刀剣ワールドも「国光の子とされるが門人説もある」としています。
また、行光は正宗の父と伝わるほか、正宗の兄弟子にあたるとも言われます。いずれにしても、師である新藤五国光から受け継いだ技術を正宗へ伝えた「橋渡し役」として、相州伝の歴史のなかで欠かせない存在です。刀身の彫物は、兄弟子で日光山の法師とされる大進坊の手によると伝えられています。
作風の特徴
行光の作風は、時期によって変化したと考えられています。初期は師の国光に近いおだやかな作で、後期になると身幅が広めで、沸(にえ)が強く、金筋や稲妻といった働きが目立つ、相州伝らしい華やかな出来になっていきます。
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 姿 | 短刀はやや内反りのものがみられる。初期は身幅が広くなく、後期は身幅広め・反り少なめ |
| 地鉄 | 板目肌がよく詰み、地沸が厚くつき、地景がよく現れる。小板目肌が青白く冴えるとも評される |
| 刃文 | 直刃が中心。ほつれ刃や小乱れ、のちには大模様の乱刃も。金筋・砂流しがかかり沸が強い |
| 銘 | 在銘作は短刀に限られ、太刀はすべて大磨上げ無銘とされる |
「沸」や「金筋」などの用語は刃文の解説もあわせてご覧ください。
代表作
- 国宝 短刀〈銘行光/〉(東京国立博物館):加賀前田家に伝わった一振りで、文化遺産オンラインでは「相州行光の傑作」と紹介されています。刃長26.4cmの平造の短刀です。
このほか、織田信長から森蘭丸へ渡ったと伝わる「不動行光」の逸話もよく知られています。
鑑賞・購入のポイント
- 在銘作は短刀のみで、太刀・刀は無銘極め(「伝行光」)が中心です。無銘の作は鑑定書の内容をよく確認しましょう。
- 名工ゆえに偽銘も多いと考えられます。「行光」銘の短刀は、公的な鑑定や伝来の裏付けがあるかどうかを重視するのが安心です。
- 加賀の「加州行光」など同名の別工もいるため、国や時代を取り違えないよう注意が必要です。
相州伝全体の流れは五箇伝の記事でも紹介しています。
基本情報
| 刀工名 | 行光 |
|---|---|
| 読み | ゆきみつ |
| 時代 | 古刀 |
| 国 | 相模 |
| 代 | — |
位列
| 位列 | 位 | 備考 |
|---|---|---|
| 刀剣要覧の位列 | 古刀・最上作 | 第22版(古刀の部・二位) |
| 刀工辞典の位列 | 古刀・最上作 | 名寄せ:旧slug soshu-yukimitsu |
位列から見る刀剣界での立ち位置
- 刀剣要覧の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された181工のうちの一人で、5段階中、上から2番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです。古刀・新刀・新々刀ごとに段階が分かれています。(一覧を見る)
- 刀工辞典の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された615工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです(最上作〜中作の5段階)。(一覧を見る)
位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。
生きた時代と歴史的背景
古刀(〜慶長年間)
古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。
相州伝(五箇伝)の傾向
相州伝は五箇伝の一つです。傾向の詳細は相州伝とはで解説しています。
| 見どころ | 傾向 |
|---|---|
| 姿(すがた) | 身幅が広く、切先が延びる豪壮な姿が多い。刀身の中ほどで反る「中反り(なかぞり)」のものも見られる |
| 地鉄(じがね) | 板目肌(大板目が交じるものも)に地沸(じにえ)が厚く付き、地景(ちけい)などの働きが多い |
| 刃文(はもん) | 焼幅が広く、荒い沸が付いた、のたれや互の目(ぐのめ)主体の変化に富んだ乱れ刃。金筋(きんすじ)・稲妻(いなずま)などの働きが見られる |
| 帽子(ぼうし) | 沸の強い乱れ込みで、掃きかけ(はきかけ)るものなどが見られるとされる |
関連する刀工・ページ
同じ時代・同じ国(古刀・相模)の刀工
相模国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。
まとめ
行光は、刀剣要覧の位列で「古刀・最上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」と位置づけられている古刀の刀工です。相模国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。
出典
- https://katananokura.jp/hpgen/HPB/entries/49.html
- https://k.n-owner.jp/刀を知る/new刀を知る 古刀列位/
- https://www.tsuruginoya.com/infomation/data/iretsu-koto
- https://www.touken-world.jp/sword-artisan-directory/yukimitsu/
- https://www.meihaku.jp/sword-basic/shintogokokumitsu-masamune/
- https://meitou.info/index.php/行光
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/125847