吉房(一文字)の位列と基本情報|刀工データベース

吉房(一文字)(よしふさ)は、刀剣要覧の位列で「古刀・最上作」、刀工辞典の位列で「古刀・上々作」に位置づけられている刀工です。

一文字吉房とは

一文字吉房(いちもんじよしふさ)は、鎌倉時代中期に備前国福岡(現在の岡山県瀬戸内市)で作刀した一文字派の刀工です。福岡一文字を代表する名工で、一派のなかで最も華麗な作風を示します。現存する在銘作のうち5口が国宝に指定されているという、刀工としてほかに例の少ない高い評価を受けています。

系譜と経歴

Wikipediaによると、父は同じ一文字派の助房とされます。生没年はわかっていません。

吉房の在銘作には銘の切り方や作風に幅があるため、同じ名の刀工が複数いたとする説があります。一方で、刀剣研究者の小笠原信夫は、作風の違いは年齢による変化であり、吉房は一人だったと考えています。

作風の特徴

項目 特徴
地鉄 板目肌に乱映りが立つ
刃文 華麗な丁子乱れが主体。八重桜を思わせる「重花丁子」をまじえる
姿 反りがやや高く、身幅の広い堂々とした太刀姿の作がある

丁子の房が重なり合う重花丁子は、福岡一文字の華やかさを象徴する刃文です(備前伝、刃文の種類)。

代表作

国宝の太刀は次の5口です(Wikipediaによる。指定年は国宝指定の年)。

  • 太刀 銘 吉房(号 岡田切)(国宝、東京国立博物館所蔵):天正12年(1584年)の小牧・長久手の戦いの際、織田信雄がこの刀で家臣の岡田重孝を斬ったという逸話から「岡田切」と呼ばれます。
  • 太刀 銘 吉房(国宝、東京国立博物館所蔵)
  • 太刀 銘 吉房(国宝、ふくやま美術館所蔵)
  • 太刀 銘 吉房(国宝、林原美術館所蔵)
  • 太刀 銘 吉房(国宝、個人蔵)

鑑賞・購入のポイント

吉房の在銘の太刀は国宝級の名品ばかりで、市場で目にすることはまずありません。東京国立博物館や林原美術館、ふくやま美術館などの展示で、福岡一文字の華やかな丁子乱れを実際に見るのがおすすめです。

基本情報

刀工名 吉房(一文字)
読み よしふさ
時代 古刀
国 備前
代 —

位列

位列 位 備考
刀剣要覧の位列 古刀・最上作 第22版(古刀の部・二位)/矢澤商会掲載の刀剣要覧位列では照合できず(単一出典)。
刀工辞典の位列 古刀・上々作 —

位列から見る刀剣界での立ち位置

  • 刀剣要覧の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された181工のうちの一人で、5段階中、上から2番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです。古刀・新刀・新々刀ごとに段階が分かれています。(一覧を見る)
  • 刀工辞典の位列:「古刀・上々作」——古刀の部に掲載された615工のうちの一人で、5段階中、上から2番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです(最上作〜中作の5段階)。(一覧を見る)

位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。

生きた時代と歴史的背景

古刀(〜慶長年間)

古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。

備前伝(五箇伝)の傾向

備前伝は五箇伝の一つです。傾向の詳細は備前伝とはで解説しています。

見どころ 傾向
姿(すがた) 区(まち)の近く、刀身の手元寄りから反る「腰反り(こしぞり)」が多い
地鉄(じがね) 板目肌に杢目(もくめ)が交じる。地に白い影のような「映り」、とくに「乱れ映り」が立つものが多い
刃文(はもん) 丁子の実を並べたような華やかな丁子乱れが代表的。匂(におい)を主体とした刃文が多い
帽子(ぼうし) 長船派の長光・景光・真長には、横手の上で乱れて小丸に返る「三作帽子(さんさくぼうし)」が見られるとされる

関連する刀工・ページ

同じ時代・同じ国(古刀・備前)の刀工

備前国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。

まとめ

吉房(一文字)は、刀剣要覧の位列で「古刀・最上作」、刀工辞典の位列で「古刀・上々作」と位置づけられている古刀の刀工です。備前国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。

出典

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