国安(粟田口)(くにやす)は、刀剣要覧の位列で「古刀・極上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」に位置づけられている刀工です。
粟田口国安とは
粟田口国安(あわたぐちくにやす)は、鎌倉時代初期に山城国粟田口(現在の京都市東山区)で活躍した刀工です。粟田口派の祖・国家の子で、「粟田口六兄弟」の三男にあたります。後鳥羽上皇の御番鍛冶を務めた名工の一人で、一門のなかでは丁子乱れなど華やかな刃文を焼いた点に個性があります。
系譜と経歴
国安は国家の三男で、通称を藤三郎(林藤三郎)といいました。兄に国友・久国、弟に国清・有国・国綱がいます。在銘作の年代はおよそ正治年間(1199年ごろ)とされ、山城守を受領したと伝えられます。
後鳥羽上皇が諸国の名工を召して月ごとに作刀させた「御番鍛冶」では、4月を担当したとされています。粟田口派全体の流れは粟田口派の解説をご覧ください。
作風の特徴
| 見どころ | 特徴 |
|---|---|
| 姿 | 鎌倉時代初期らしい、反りの高い太刀姿。樋を掻いた作が多い |
| 刃文 | 焼幅の広い丁子乱れ、または直刃に丁子がまじる刃文。ややくずれた小乱れを焼く作もある |
| 地鉄 | 粟田口派らしいよく詰んだ精美な鍛え |
直刃を基調とすることが多い粟田口派のなかで、華やかさを感じさせる刃文が国安の見どころです。刃文の用語は刃文の解説、京物の特徴は山城伝の解説が参考になります。
代表作
- 太刀 銘 国安(東京国立博物館):文化遺産オンラインでは、鎌倉時代初期らしい高い反りと、ややくずれた小乱れの刃文に国安の個性がよく表れ、在銘作が少ないなかで生ぶの姿を保つ貴重な作と紹介されています。
このほか、国安の作で重要文化財に指定されたものがあると紹介されています。
鑑賞・購入のポイント
- 国安の在銘作は少なく、市場に出ることはまれです。東京国立博物館などの展示で実物を鑑賞するのがおすすめです。
- 「国安」の名は他の時代・国の刀工にも見られるため、国と時代の確認は欠かせません。
基本情報
| 刀工名 | 国安(粟田口) |
|---|---|
| 読み | くにやす |
| 時代 | 古刀 |
| 国 | 山城 |
| 代 | — |
位列
| 位列 | 位 | 備考 |
|---|---|---|
| 刀剣要覧の位列 | 古刀・極上作 | 第22版(古刀の部・一位) |
| 刀工辞典の位列 | 古刀・最上作 | — |
位列から見る刀剣界での立ち位置
- 刀剣要覧の位列:「古刀・極上作」——古刀の部に掲載された181工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです。古刀・新刀・新々刀ごとに段階が分かれています。(一覧を見る)
- 刀工辞典の位列:「古刀・最上作」——古刀の部に掲載された615工のうちの一人で、5段階中、上から1番目の位です。刀工の技量・出来(作位)を示す格付けです(最上作〜中作の5段階)。(一覧を見る)
位列は資料ごとに評価の基準が異なります。見方は刀工の位列とはで解説しています。
生きた時代と歴史的背景
古刀(〜慶長年間)
古刀とは、一般に慶長年間(1596年〜)より前に作られた日本刀を指します。平安時代後期から安土桃山時代にあたり、武士の世の中で日本刀が実戦の武器として発達し、大和・山城・備前・相州・美濃の五箇伝の作風が生まれた時代です。詳しくは古刀・新刀・新々刀・現代刀の違いをご覧ください。
山城伝(五箇伝)の傾向
山城伝は五箇伝の一つです。傾向の詳細は山城伝とはで解説しています。
| 見どころ | 傾向 |
|---|---|
| 姿(すがた) | 反りの中心が刀身の中ほどにくる「中反り(なかぞり)」で、鳥居の笠木のような「鳥居反り」とも呼ばれる。細身で優雅、小切先(こぎっさき)のものが多い |
| 地鉄(じがね) | 小板目肌(こいためはだ)がよく詰み、潤いがある。地沸(じにえ)が細かく付く |
| 刃文(はもん) | 小沸(こにえ)を主体とした直刃が基調。小乱れや小丁子が交じり、刃中の働きが豊か |
| 帽子(ぼうし) | 品よく小丸(こまる)に返るものが見られる |
関連する刀工・ページ
同じ時代・同じ国(古刀・山城)の刀工
山城国が現在のどの都道府県にあたるかは旧国名一覧で確認できます。
まとめ
国安(粟田口)は、刀剣要覧の位列で「古刀・極上作」、刀工辞典の位列で「古刀・最上作」と位置づけられている古刀の刀工です。山城国の刀工とされます。位列は刀工への評価であり、一振りごとの出来や真贋を保証するものではありません。実際の刀を見るときは、姿・地鉄・刃文を自分の目で確かめることが大切です。鑑賞のポイントは日本刀の鑑賞方法で解説しています。